言えないよ、そんなの。
…好きだなんてさ。
かたつむり
歌を聴いて涙するほど感傷的な気分でも無い。
ただ、どうにもこうにも切羽詰まる感じ。
引っ込めたいけど、今それをしたらきっとずっと言えない。
すきだってこと。
本当は帰る方向の違う俺にそれでも不二は気付いて、黙っていてくれているのかもしれない。
俺のこと、好きなのかもしれない。
そうだったら、いいのに。
ぼんやり考える俺は、今日も帰宅時間が遅れる理由どうしようなどと
本当はどうでもいいことばかりだ。大抵いつも。
赤茶色に染まるアスファルト。公園からこぼれる緑。
君の白。
手を繋ぐわけでも、込み入った事を話すわけでもない。
とりとめのないことばかりで、道は少しづつ少なくなっていく。
今日の部活、数学の時間、お昼の屋上。
強い風に窓を閉める不二を俺は見てた。
なんにもいえないまま。
だって、あと少しなんだよ?ほんとにちょっと。
もう何日も無い。
あとちょっとで、終わっちゃうんだ。こうやって話す時間も、無くなる。
殻にこもりたい。
そんで角を出す間も無く終わればいいのに。悲しいこと全部。
かたつむり以下の小ささで、
「やだなあ、英二はフザけてばっかりで。
…あ、それじゃ。また、明日ね?」
ふじ。ふじ。
あしたはさ、なんのひかしってる?
おわっちゃうんだよ。
ぜんぶ、おわっちゃうんだよ。
「俺、フザけてなんかないよーっ」
もう遠く離れてしまった君に向かって叫んだ。
「…フジがすき」
それはとても小さい声だったけど、君がびっくりした顔で振り返ったから、僕もびっくりして元来た道へと走り出す。
走り出して。
「…え、じ」
走ってくる不二を見て俺はますますびっくりして
息をきらす不二に口をきくことも出来なかった。
ゆっくりいきをする不二が、少しづつ話し出す。
「英二、さ。…なんて、言ったの。」
「…へ?」
まっすぐなめはまっすぐこっちをみていて
そらされなかった。これっぽっちも。
「さっきさ、…小さい声でなんか、言ったでしょう。
教えて。」
駄目だよ、不二。
俺の心臓、そんなに丈夫に出来てない。
かたつむりより、小さいんだよ。
そんなこと、言えないよ。
好きだなんて、言えっこないよ…。
「…あの、さ。
ぼくは、ね
えいじが、
すきだよ。
えいじは?」
縮こまっていた角が、一気にぴんと張って、
気付いたら外に、引っ張り出されていた。
「…えいじは?」
もう不二は息を切らしていなかった。
けれどあのまっすぐなめはとぎれていた。
つのはぴんとはでていなかった。
つぎは、えいじのばんだよ。
アスファルトから跳ね返るまっすぐが言った。
「…あのね、
俺は…」
あのとき、つのをだせてよかった。
きみがすきだと、ぼくはつたえられたでしょうか。
ぼくはおくびょうものだけれど、けれど、
きみをまもるためなら、やりだってだしてみせたい。
そう、おもうのです。
Fin